2023年はほぼすべての大規模私大で倍率が下がりました。
2016年度に文科省の肝いりで始まった「私立大学の定員厳格化」ですが、
2023年の入試から「私立大学の定員厳格化の緩和」がされたことで、
都市部のほぼすべての私立大学で倍率が下がり(合格者数が増え)、
合格難易度も下がったと思われます。
【私立大学の定員厳格化の緩和】(2023年)についてまとめました。
私立大学の定員厳格化の緩和で倍率が下がった(2023年の入試・受験)!私大が簡単に?
先にまとめを。
【私立大学の定員厳格化の緩和で倍率が下がった(2023年の入試・受験)!のまとめ】
・2016年~2022年は都市部の私立大学で定員厳格化→入試難易度+倍率上昇
・2023年入試は「私立大・定員厳格化・緩和」→倍率低下(入試難易度も低下のはず)
(年単位→「全学年の総定員で規制」に変化)
・2024年以降の入試は「全学年の総定員」の規制である事の確認が必要
・「難易度」は入試制度とダイレクトなので状況をしっかり確認する事が必要
「私立大学の定員厳格化」の確認
そもそも、「私立大学の定員厳格化」とは?
・大都市の大規模私大に学生が集中しているのを是正するための制度
・実施前の2014年には私大の入学者は定員を約45000人も超過
(超過の8割が3大都市圏に集中)
・文科省が「地方大学の定員割れを防ぐため」に「定員厳格化」を導入
・具体的には、定員超過の都市部大規模私大に補助金をカットすると決定
・2015年度、大規模私大で超過は1.2倍未満とされていた
・2016年度、定員の1.17倍、17年度1.14倍、18年度1.1倍
(つまり「定員通りの合格者数にしろ!」という事)
私立大学も商売ですから、
「来たい人がいるならどうぞ」
という形で、一定の学力以上であれば合格をバンバン出して
いたわけですが、それが「定員を厳格に」となって、一気に
合格者数が減る事になりました。
2017年には早稲田、明治、青学などは2000人も合格者を減らしました。
同年は早慶上智MARCHで2015年比で10000人以上合格者が減りました。
それまで受かっていた1万人が不合格になったわけですから、2017年
の私立大学受験者はかわいそうと言えばかわいそう?
とはいえ、合格者数を厳格にしたことで、定員割れを起こすとまずいので、
都市部の私大では「繰り上げ合格・補欠合格」が大量に出される年・大学
もあったようです。
繰り上げ合格・補欠合格が増える事で、受験生には思わぬ弊害がありました。
国公立の合格発表までに私大の滑り止めに振り込む入学金が2校になったり
して、50万円を超える事も起こったりしました。
というのは、合格発表の遅い有名私大が補欠合格を順次出すようになった
事で、以下のような受験生・家庭が続出しました。
・早慶等の難関私大に不合格になる
・私大の抑え校に入学金を払う
・払った後で早慶等から「補欠合格・繰上げ合格」の通知が来る
・早慶等に入学金を払う
・国公立の合格発表で合格して国公立に進学
このパターンですと、入学金を2回以上払う事になり、払い損(保険)の
お金が50万円~60万円になる事になります。
私立大学の定員厳格化の緩和で倍率が下がった(2023年の入試・受験)!
この文科省の方針(都市部大規模私大の定員厳格化)が緩和されたのが
2023年の入試です。
具体的には、
定員基準は毎年の入学定員ではなく、全学年の総定員で判断される
事になりました。
これまで7年ほど「定員厳格化」でやってきた大規模私大ですから、
今いる学生数は定員ちょうどくらいかもしれません。
そうすると、「2023年は合格者数増やしても良いんじゃね?」
となったのか
「私立大学の定員厳格化の緩和で倍率が下がった(2023年の入試・受験)」
という現象が起きました。
各大学の具体的な倍率を見てみましょう。
大学の入試は色々な方式がありますので、以下の数字はあくまでも大枠の目安
とお考え下さい。また倍率は実質倍率(合格者数÷受験者数×100)です。
早慶上理
大学名 | 2023年の倍率 | 2022年の倍率 | 増減 |
早稲田(政経学部) | 3.3 | 4.1 | ▼0.8 |
慶応(経済学部) | 3.1 | 3.4 | ▼0.3 |
上智 | 3.5 | 5.4 | ▼1.9 |
東京理科大 | 3.0 | 3.8 | ▼0.8 |
MARCH
大学名 | 2023年の倍率 | 2022年の倍率 | 増減 |
明治大学 | 4.1 | 4.9 | ▼0.8 |
青山学院大学 | 4.4 | 7.9 | ▼3.5 |
立教大学 | 4.2 | 6.0 | ▼1.8 |
中央大学 | 3.7 | 5.2 | ▼1.5 |
法政大学 | 4.3 | 6.1 | ▼1.8 |
関関同立
2023年倍率 | 2022年倍率 | 増減 | |
関西大学 | 4.2 | 5.6 | ▼1.4 |
関西学院大学 | 2.6 | 4.1 | ▼1.5 |
同志社大学 | 2.9 | 3.2 | ▼0.3 |
立命館大学 | 2.7 | 3.4 | ▼0.7 |
日東駒専
2023年倍率 | 2022年倍率 | 増減 | |
日本大学 | 2.7 | 3.9 | ▼1.2 |
東洋大学 | 2.9 | 4.6 | ▼1.7 |
駒澤大学 | 3.1 | 4.2 | ▼1.1 |
専修大学 | 3.0 | 5.5 | ▼2.5 |
まとめ―私立大学の定員厳格化の緩和で倍率が下がった(2023年の入試・受験)!私大が簡単に?
より正確に言うと、2016年~2022年までの都市部大規模私大が
合格するのがこれまでより大変だったという事になりそうです。
特にMARCHあたりは顕著だったのではないでしょうか?
とはいえ、2023年に私大の定員厳格化が緩和されたと言っても
なくなったわけではなく、
定員基準は毎年の入学定員ではなく、全学年の総定員で判断される
ことになっただけなので、「揺り戻し」現象が毎年起こり、隔年で
入学難易度が変わるのでは困ると言えば困りますが…。
昨今、私立大学はAOや自己推薦、指定校推薦などで定員の半分以上を
埋めるといった流れになっていますので、「私大の定員厳格化」が
揺れ動くといっそう「一般入試の前に合格を決めたい」と思う受験生
や家庭が増えてきそうな気もしますね。
それにしても、「大学院重点化」「ゆとり教育」の昔からそうですが、
文科省はいろいろと首を突っ込んで高校やら大学やらになんだかんだと
させますが、制度をいじってグダグダになったけど、結果的には?
という事が多い気がしますね。
今回の「都市部の大規模な私大の定員厳格化」も、そもそもは「地方創生」
「都市部への学生の流入抑制」の観点からされたという事ですが、
その効果は?だれが責任を取るの?