四大公害病の基本
第二次世界大戦後(終戦は1945年)、日本が高度経済成長
(1950年代後半~1970年代)を遂げる裏側では、急激な発展のために、
有害物質を川に流したりするなどの行為が横行し、法整備も整っていな
かったために、多くの「公害」が起こりました。
その中でも有名なのが「四大公害病」です。
四大公害病(出典:日本の公害問題)
四大公害病の基本
●名前:水俣病/場所:熊本県水俣市(水俣湾)/原因:メチル水銀
●名前:イタイイタイ病/場所:富山県神通川流域/原因:カドミニウム
●名前:新潟水俣病(第二水俣病)/場所:新潟県の阿賀野川の下流域/原因:メチル水銀
●名前:四日市ぜんそく/場所:三重県四日市市/原因:亜硫酸ガス+大気汚染
中学受験対策としての「四大公害病」は以下三点をきちんと覚えておく必要があります。
●名前
●場所(都道府県・川)
●公害病の内容
個々の公害病名と場所がきちんとリンクしている事が大事です。
4箇所しかないので、地図を何度も見て、語呂合わせ(1342)とセットで
覚えられると思われます。
難関校対策としては、そこからさらに進んで、個々の公害病の
詳細や原因、他との違いまで理解していると良いでしょう。
正誤問題で言うと、すべての公害病で、原因が特定されていて、
すべての裁判で原告(被害者)側が勝訴しています。
四大公害病(出典:日本の公害問題)
1 水俣病/場所:熊本県水俣市(水俣湾)/原因:メチル水銀
「水俣病」は公害病の象徴のように言われています。
1953年(昭和28年)頃から、熊本県南西部の水俣湾で発生しました。
原因物質はメチル水銀です。新日本窒素肥料水俣工場の排水
に含まれるメチル水銀を魚介類が摂取し、食物連鎖を通じて
魚類に生体濃縮され、これを食べた住民が手足や口のしびれ等々の
症状があらわれ、死にいたる事もありました。胎児性水俣病もありました。
Minamataの名前で世界的に知られました。
水俣病の場所:熊本県の水俣湾
水俣湾は、熊本県の南西部です。
水俣病の原因:メチル水銀
チッソ(会社の名前)はビニールづくりに必要な原料である
アセトアルデビドを生産する工場でした。
このアセトアルデビドを作るときに使用された硫酸水銀という
物質から発生したのが、原因となった物質のメチル水銀です。
水俣病のその後
有害物質が溜まってしまっていた水俣湾は、13年かけて埋め立てられました。
1997年、熊本県知事は「水俣湾の安全宣言」を行いました。
水俣湾で魚を釣って、その魚を食べることもできるし、水俣湾で泳ぐことも
できるようになったのです。
現在の水俣市は、世界の環境モデル都市として、水俣病の悲劇を二度と繰り
返さないために積極的な都市づくりを行っています。
受験対策としての水俣病
「水俣病」は場所が必須です。熊本県南西部の水俣湾。
また、公害病の代表のようになっていますので、詳細
まで知っておいた方が良いでしょう。
2 イタイイタイ病/場所:富山県神通川流域/原因:カドミニウム
「イタイイタイ病」は富山県神通川流域で起こっています。
1910年代~1970年代という長い期間にわたっています。
原因は「カドミニウム」という物質です。
イタイイタイ病の場所:富山県神通川流域
イタイイタイ病の原因:カドミウム
イタイイタイ病の原因は、神通川の上流の岐阜県の高原川に、
三井金属鉱業神岡鉱山の亜鉛精錬所から流れ出たカドミウムという
物質による水質汚染です。
神通川上流の流域では、江戸時代から銀や銅、鉛などを生産していま
した。その川の水を使って農業をしたり、飲み水に使ったりしていた
ので、当時から被害は出ていました。
日露戦争(1094-05)をきっかけに、非鉄金属(鋼以外の金属)の生産が
注目され、生産量が大きく増加。さらに戦後の高度経済成長期を迎え、
カドミウムを含んだ大量の廃物が川に流れ込んでしまいました。
そのため、工場周辺の地域だけでなく、神通川の下流地域に住んでいた人
にも被害を与えてしまいました。
当時は公害病の原因となった物質のカドミウムについて、よくわかっておら
ず、病気とどう関連しているかもはっきりしていなかったため、対策をすぐ
にとることができず、公害を広めてしまう結果になりました。
イタイイタイとしか言えない
イタイイタイ病は、骨軟化症を招き、ちょっと動いただけで、骨折をするなど、
患者が「イタイイタイ」としか言えなくなるような症状を示したことから
「イタイイタイ病」と言われています。
受験対策としてのイタイイタイ病
「イタイイタイ病=富山県」、これがまず必須です。
次に、富山県の神通川流域である事ですね。これは川の名前が
大事です(新潟水俣病は阿賀野川)。
また、かなり古い時代から神通側流域ではそういった
公害問題があった事も知っておいた方が良いでしょう。
3 新潟水俣病(第二水俣病)/場所:新潟県の阿賀野川の下流域/原因:メチル水銀
新潟水俣病の場所:新潟県の阿賀野川下流域
https://www.asahi.com/articles/ASH3N4DMZH3NUOHB00V.html
信濃川の河口である、新潟市の近郊です。
新潟水俣病の原因:メチル水銀
原因は熊本県の水俣病と同じです。
工場の排水に含まれるメチル水銀を阿賀野川の魚介類が摂取し、食物連鎖を
通じて魚類に生体濃縮され、これを食べた住民が手足や口のしびれ等々の
症状があらわれ、死にいたる事もありました。
受験対策としての新潟水俣病
名前が新潟水俣病ですから、県は出ません。出るのは、川の名前です。
阿賀野川の下流域です。地図上の場所も知っておいた方が良いでしょう。
1965年(昭和40年)と四大公害病では最も遅く確認されました。
そのために、今でも、「新潟水俣病は防げたのではないか?」
といった議論がされています。
4 四日市ぜんそく/場所:三重県四日市市/原因:亜硫酸ガス+大気汚染
四日市ぜん息は、文字通り、三重県四日市市で発生した、ぜんそくを
症状とする公害病です。
四日市ぜん息の場所:三重県四日市市
四日市ぜん息の原因
大気汚染と亜硫酸ガスが原因です。
三重県四日市市は港を埋め立てた広い土地に、日本初の本格的な
石油化学コンビナート(四日市コンビナート)があります。
工場で石油を精製するときに亜硫酸ガスが煙と一緒に大気に流れ
出ていたのです。
異常な数の患者がぜん息を訴え、原因が、空気中に多くの工場から
排出された有毒なガスが含まれていることだった事がわかりました。
こうして、四日市コンビナートが公害病の原因と断定されたのです。
気管支炎や気管支ぜんそくが具体的な病名です。
「ぜんそく」というとセキと思われがちですが、認定されているだけで
死者は600人に及んでいます。
受験勉強としての四日市ぜん息
場所が三重県四日市市であること。地図も必須です。伊勢湾沿いですね。
他の四大公害病はすべて「川」が関わっていますが、四日市ぜんそく
は、石油コンビナートの大気汚染が原因です。
四大公害病の覚え方(語呂合わせ):1342
1342
1―イタイイタイ病(富山県)
3―みなまた病(熊本県)
4―よっかいち市(三重県四日市市)
2―にいがた水俣病(新潟県)
四大公害病のまとめ
四大公害病の基本
●名前:水俣病/場所:熊本県水俣市(水俣湾)/原因:メチル水銀
●名前:イタイイタイ病/場所:富山県神通川流域/原因:カドミニウム
●名前:新潟水俣病(第二水俣病)/場所:新潟県の阿賀野川の下流域/原因:メチル水銀
●名前:四日市ぜんそく/場所:三重県四日市市/原因:亜硫酸ガス+大気汚染
戦後の高度経済成長(1950年代後半~1970年代)の副産物、副作用
という理解で間違ってはいないのでしょうが、多くの人がそのために
亡くなっている事は忘れてはいけないでしょう。
その後、「開発独裁」「成長独裁」的な方向には法的に待ったが
かかるようになっています。ただし、いわゆる開発途上国等では、
21世紀の現在も同じような問題が起きているのもまた事実です。