都立中学(都立中高一貫校)は人気ですが、開学当初より倍率が
下がってきています。
この記事では、都立中学(都立中高一貫校)の倍率の推移を確認し、
「都立中の倍率が(以前に比べて)下がっている5つの理由」
を検証してみたいと思います。
(関連記事)
都立中高一貫校の倍率(応募倍率)・2024年度(令和6年度)・一般枠:小石川・白鷗・両国・桜修館・富士・大泉・南多摩・立川国際・武蔵・三鷹
先に結論:都立中の倍率が下がっている5つの理由
1 都立中学は学費0円で魅力だが、入るのに塾の費用が高い
2 対策・塾なしでの都立中合格は難しい事が浸透
3 倍率が下がったとはいえ「都立中受検は基本が落ちる入試」
4 だから、コスパとしてどうなのかと考える層が増えた
(本気の「ガチ受験勢」以外が減った)
5 受かる「ガチ受験勢」は変わらないので偏差値は高止まり
(進学実績も上昇傾向のまま)
以下で詳細に検証していきます。
*2024年度からの東京都による「高校授業料実質無償化」「私立中学年間
10万円補助」については「まとめ」に追記していますが、その影響も
2024年度の都立中学の倍率減少にはあると思います。
都立中高一貫校はいつから発足?いつできた?
(千代田区立九段中等を含めると)11校の都立中学ができたのは以下の年です。
学校 | 設立年 |
白鷗高附属中 | 2005年 |
小石川中等 | 2006年 |
両国高附属中 | 2006年 |
桜修館中等 | 2006年 |
立川国際 | 2008年 |
都立武蔵 | 2008年 |
三鷹中等 | 2010年 |
南多摩中等 | 2010年 |
富士高附属中 | 2010年 |
大泉高附属中 | 2010年 |
(千代田区立九段中等) | (2006年) |
「都立中学」は2005年の白鷗が最も古く、その後2010年までに現在の
10校(千代田区立九段を入れると11校)が開校しています。
つまり、2023年時点で、13年~18年の歴史がある(しかない)と言えます。
とはいえ、すべての学校に前身の都立高校があり、すべてがいわゆる
進学校でした。ですので、開校当初から高倍率が続きました。
(はっきりと名前が変わっているのは、桜修館←都立大付属高校、
立川国際←北多摩高校です)
都立中高一貫校の受検倍率推移(2005年~2023年)
小→小石川、白→白鷗、両→両国、桜→桜修館、富→富士、大→大泉、南→南多摩、立→立川国際、武→武蔵、三→三鷹
(2024年度の都立中学の一般枠の倍率は、全体で4.03倍(2023年度は4.45倍)
でした。過去最低の倍率ですね。募集人員が1569人に対して、応募人員が6325人
となっています。最も倍率が高いのが、三鷹中等教育学校の4.81倍です)
この「都立中学の倍率推移」を見れば一目瞭然ですが、
・2005~2009年は10倍を超える倍率の学校がある
・2010年に10校が出そろってからは10倍を超える学校がない
・平均倍率も6~7倍→5倍~4倍と段階的に下がっている
事が分かります。
また2010年以降、最も倍率が高い都立中学は、
南多摩→大泉→両国→白鷗→両国→三鷹
という事も分かります。
いずれにせよ、2005年の白鷗高校附属中学の開学から、2010年に
都立中学が10校になって以降、都立中学の倍率は徐々に徐々に下がっ
てきているのは間違いがありません。
なぜなのでしょう?
小→小石川、白→白鷗、両→両国、桜→桜修館、富→富士、大→大泉、南→南多摩、立→立川国際、武→武蔵、三→三鷹
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都立中高一貫校の倍率(応募倍率)・2024年度(令和6年度)・一般枠:小石川・白鷗・両国・桜修館・富士・大泉・南多摩・立川国際・武蔵・三鷹
都立中の倍率が(以前に比べて)下がっている5つの理由
1 都立中学は学費0円で魅力だが、入るのに塾の費用が高い
2 対策・塾なしでの都立中合格は難しい事が浸透
3 倍率が下がったとはいえ「都立中受検は基本が落ちる入試」
4 だから、コスパとしてどうなのかと考える層が増えた
(本気の「ガチ受験勢」以外が減った)
5 受かる「ガチ受験勢」は変わらないので偏差値は高止まり
(進学実績も上昇傾向のまま)
個別に検証していきます。
1 都立中学は学費0円で魅力だが、入るのに塾の費用が高い
都立中学(都立中高一貫校)は、ハイレベルな教育を与えられ、中高一貫で
高校受験もなく、同級生等の環境も良さそうで、さらに公立なので学費が安い
(諸々の経費を考えると0円ではないにしても、私立に比べたら格安)。
という事で、開学当初は10倍を超える人気を集める事もあり、一種の
倍率バブルの時期がありました。
ですが、すぐに分かってきたのは、都立中学に入学する子の通塾率の
高さです。千代田区立九段中等が学校説明会の資料で明らかにした
所によると、合格者の実に92%が通塾していたとの事です。
全員とは言いませんが、実質全員に近い数字です。
つまり、「学費が安い都立中学に通わせたい」けれど「都立中学に合格
させるには学費の高い塾に通わせる必要がある」という現実があるわけ
ですね…。矛盾というやつです。
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以下でその点をもう少し掘り下げます。
2 対策・塾なしでの都立中合格は難しい事が浸透
都立中学の受検(受験ではなく「受検」と表記)は、公立の中学校では
入学者の選抜手段に、試験を受けること(=受験)を実施することが許さ
れていないため、都立中高一貫校に適している生徒か、検査を受ける(=受検)
ことにより、入学者を決定しています。なんか屁理屈っぽいですね・・・。
そして、都立中高一貫校に適した生徒かを確認する検査を適性検査としています。
とはいえ、実際・実態は「入学試験」と考えてなんら問題ありません。
小学校5・6年次の成績等を点数化したものを「報告書」として
受検する都立中学に提出します。
適性検査と報告書を合わせたものが総合成績となります。
適性検査と報告書の配点は各校で異なります。
さて、この「適性検査」ですが、
1 公立小学校で習う範囲以外は出題されません
2 「総合」問題がほとんど
3 記述・作文が多い
一応、名目上は上記のようになっています。
ですから、私立中学でたまにある、「何この問題?」みたいな
とんでもなく些末な知識が問われるような事は基本的にありませ
ん。
そのため、「小学校の成績が良いし、うちの子なら?」と考える
ご家庭が当初は多数あったようです。
ですが、現実には、都立中学の適性検査は甘くなく、一定の対策が
なければ合格は難しい事がドンドン浸透して行きました。
もちろん、enaをはじめ、「都立中高一貫校・専門」をうたう塾も多数
出てきました。
そして、だんだんと、
「都立中に合格するには通塾しての対策が必須」
という事が知れ渡ってきました。
2023年度の都立中合格者の塾別の内訳です。
9割以上が塾に通っていたと考えて間違いないですね…。
都立中学・塾別の合格実績(2023年度・令和5年度):ena/SAPIX/早稲田アカデミー/四谷大塚/日能研/早友/臨海/栄光/早稲田進学会/進研ゼミ/Z会
3 倍率が下がったとはいえ「都立中受検は基本が落ちる入試」
「都立中に合格するには通塾しての対策が必須」
という事が浸透してきただけなら倍率が下がる(受検者が減る)
要因としてはそこまで強くはないのかもしれませんが、「都立中学」と
「私立中学」の大きな違いは、都立中には偏差値の高い学校しかない
という点です。
四谷大塚偏差値で58~67くらいの難関~最難関の学校しかありません。
私立中学であれば、偏差値帯に幅があるので、一定の努力をすれば、
「どこかの私立中学には合格できる」と考えて問題ありません。
一方、都立中学は違います。
2010年の6.8倍であれば、約7人に一人しか合格できません。
実に86%近い子が不合格になるわけです。
仮に最も倍率が低かった2023年でも4.22倍です。
4人に一人以下しか受からないわけですから、75%以上が
不合格になります。
厳しい現実を言うと、都立中はenaで6年生だけで150万円かけても「多くが落ちる」という事ですね。全体で4.45倍なので、約4.5人に一人しか受かりません。7~8割の家庭は3年間で200~300万円かけて不合格というのが実際の所です。「学費は安い」と言えるのは勝者だけですね…。 https://t.co/7w2JnoTJXD
— 塾なしで中学受験するブログ→できました。 (@bunponcom) February 8, 2023
つまり、都立中学の受検・入試は、倍率と学校の難易度(難関~最難関しかない)
から考えると、75%~85%位は落ちる試験だという事です。
落ちる事を前提としないといけないわけです。厳しい現実です…。
あれ、そうすると・・・。
・学費は安いけど、塾に行かないと受からないんでしょ?
・塾は高いんでしょ?(enaだと6年生だけで約100万円~160万円)
・でも、75%以上は受からないんでしょ?
・え?塾代払い損にならない・・・
というのが、ここ5年ほどで見えてきたのかもしれません。
1 都立中学は学費0円で魅力だが、入るのに塾の費用が高い
2 対策・塾なしでの都立中合格は難しい事が浸透
3 倍率が下がったとはいえ「都立中受検は基本が落ちる入試」
4 だから、コスパとしてどうなのかと考える層が増えた
(本気の「ガチ受験勢」以外が減った)
5 受かる「ガチ受験勢」は変わらないので偏差値は高止まり
(進学実績も上昇傾向のまま)
↓に加えて、厳しい現実としては、私立は選ばなければどこかにはいけるけど、都立中だけ受検の場合7-8割は落ちるので、enaに200-300万払ったけど公立中学進学→高校受験という流れが結構あります。周りにもそれなりにいます。親としてはけっこうきついかと。 https://t.co/eY2dsbHOJR
— 塾なしで中学受験するブログ→できました。 (@bunponcom) February 9, 2023
都立中学が学費が安いから目指す!という人にとっては、あまりにも
厳しい現実です。
4 だから、コスパとしてどうなのかと考える層が増えた(本気の「ガチ受験勢」以外が減った)
・学費は安いけど、塾に行かないと受からないんでしょ?
・塾は高いんでしょ?(enaだと6年生だけで約100万円~160万円)
・でも、75%以上は受からないんでしょ?
・え?塾代払い損にならない・・・
↓に加えて、厳しい現実としては、私立は選ばなければどこかにはいけるけど、都立中だけ受検の場合7-8割は落ちるので、enaに200-300万払ったけど公立中学進学→高校受験という流れが結構あります。周りにもそれなりにいます。親としてはけっこうきついかと。 https://t.co/eY2dsbHOJR
— 塾なしで中学受験するブログ→できました。 (@bunponcom) February 9, 2023
もちろん、塾業界は「都立中の適性検査の勉強は公立中学校に行っても
役に立ちます!」といった事を言いますし、それはある程度事実でしょう。
また、enaは6年生の時通っていた子は中1はほぼ無料で継続できるような
システムがあるようです(2023年現在)。うまいですね。
ただ、やはり冷静に考えると、
高額な塾代を払って都立中学だけを受けるのはコスパ悪くね?
と考えるのはむしろ当然と言えば当然です。
受かれば万々歳ですが、75%以上が落ちる試験です…。
3年間で200万円~300万円かけた人の75%以上が「不合格」という結果
になるわけです…。
その結果どうなってきているのか?
私立型の勉強もガッチリやっている層が併願で都立中学を受けるのは
変わっていなくて、学費の安さにひかれて都立中学のみ!という層が
「コスパ」を考えて減ってきているのではないかと思われます。
それはそうですよね?小学校から高額な塾に行き、結果として公立中学に
行った場合は、もう一度高校受験をしなければなりません。
高校受験の際も塾に行くことになるでしょう。
(関連記事)
都立中高一貫校と私立中学を上手に併願する4つのポイントはこれ❕公立中高一貫の適性検査対策❕
5 受かる「ガチ受験勢」は変わらないので偏差値は高止まり(進学実績も上昇傾向のまま)
この点は意外とまだ浸透していないので、字を小さく書きますが、
私立難関校と都立中の併願は容易
です。
都立中の適性検査は記述(「作文」「説明」)が基本です。
最難関私立(御三家はすべて)の国語はほとんどが「記述」です。
偏差値的にも親和性が高いので、私立型対策をガッチリやっている子
が適性検査対策もやって(重なる部分が多いので、慣れるだけとも言えます)
都立中高一貫校を2月3日に受検するというパターンは多そうです。
都立中高一貫校と私立中学を上手に併願する4つのポイントはこれ❕公立中高一貫の適性検査対策❕
2023年度の都立中合格者の塾別の内訳です。
都立中学・最難関の小石川中等には明らかに「サピックス勢」がおしかけて
いるのが分かります。「本命御三家・併願都立小石川」もしくは
「本命・都立小石川、併願・私立御三家」かもしれません。
はい、だんだん結論が見えてきました。
受かる「ガチ受験勢」は変わらないので偏差値は高止まり(進学実績も上昇傾向のまま)
しています。
つまり、都立中学は、だんだん「庶民の味方」ではなくなってきている
という事ですね。
これが最近の都立中学と都立高校の主要な進学実績です。
かなりのものです。都立武蔵なんて「本当に?」と思って
しまいます。
この実績を残した2015年、2016年あたりの都立中学への入学者たちは、
すでにやや倍率は低下傾向でしたが、進学実績は逆に上げてきていますので、
やはり、ガチ勢の受検者は維持されて、「あわよくば勢」は減ってきているの
でしょう。
まとめ
ものすごく大雑把に言うと、
都立中の倍率が(以前に比べて)下がっている理由は、
「あわよくば」と考えて、受検料も安いので都立中学を受ける「記念受検」
層がごっそりと減ってきたということかもしれません。
1 都立中学は学費0円で魅力だが、入るのに塾の費用が高い
2 対策・塾なしでの都立中合格は難しい事が浸透
3 倍率が下がったとはいえ「都立中受検は基本が落ちる入試」
4 だから、コスパとしてどうなのかと考える層が増えた
(本気の「ガチ受験勢」以外が減った)
5 受かる「ガチ受験勢」は変わらないので偏差値は高止まり
(進学実績も上昇傾向のまま)
どこかの段階で、都立中学受検の倍率(上記は受検した人数をもとにした
実質倍率です)が4倍を割るかもしれませんね。
既に都立武蔵は3倍を割っています。ですが、偏差値も進学実績も
まったく落ちていません。やはり「ガチ勢の受検は変わらず」
「記念受検が減っている」のでしょうね~。
下記の「都立中・塾別合格者数」の記事内での分析でも同じ
結果が出ていますので、傾向的には間違いないでしょうね。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
2024年1月追記
2024年度から東京都が高校の授業料を「実質無償化」する方針が決まっています。
また、「私立中学」も所得制限なしで「年間10万円」を上限に授業料が補助されます。
この影響が「都立中学の倍率低下(応募減少)」につながっている部分もあると
思われます。
仮に私立の高校に行っても、都内であれば授業料分が実質無償化されるのであれば、
「小学校の段階で無理に都立中学を受けなくても高校受験でじっくりやればいいだろう」
と考える家庭が増えてもおかしくはありません。
(金銭的な意味での)私立中学・私立高校の敷居が下がった結果、都立中チャレンジ組
が減ったという現象になりそうです。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
都立中学・塾別の合格実績(2023年度・令和5年度):ena/SAPIX/早稲田アカデミー/四谷大塚/日能研/早友/臨海/栄光/早稲田進学会/進研ゼミ/Z会
(関連記事)
都立中高一貫校と私立中学を上手に併願する4つのポイントはこれ❕公立中高一貫の適性検査対策❕
中学受験の塾の費用・お金・いくらかかる?SAPIX!ena!本当の金額!
都立中学・塾別の合格実績(2023年度・令和5年度):ena/SAPIX/早稲田アカデミー/四谷大塚/日能研/早友/臨海/栄光/早稲田進学会/進研ゼミ/Z会
都立中高一貫校の倍率(応募倍率)・2024年度(令和6年度)・一般枠:小石川・白鷗・両国・桜修館・富士・大泉・南多摩・立川国際・武蔵・三鷹
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