風景版画『富嶽三十六景』「神奈川沖浪裏(おきなみうら)」(葛飾北斎)
江戸時代(1603~1867)の文化(元禄文化→化政文化) この記事!
文化史(日本史)の概略・まとめ②(桃山文化・江戸の文化・明治の文化・大正と昭和前期の文化・戦後の文化・現代の文化)
江戸時代(1603~1867)の文化(元禄文化→化政文化)
江戸時代の「文化」は大きく「元禄文化(げんろく)」と「化政文化(かせい)」
の2つに分けられます。初期に「寛永文化」もありますが最初は知らなくて良いです。
●元禄文化(1700年前後):上方(京都や大坂)中心の町人文化。明るく、活気に満ちた文化。綱吉の頃
●化政文化(19世紀はじめ):江戸の町人文化。浮世絵。落ち着いて洗練された文化
【寛永文化4(江戸初期)→元禄文化11(江戸前期)→化政文化11(江戸後期)】
元禄文化と化政文化のまとめ
先にまとめます。このまとめ部分の具体的作品等を下記で覚えていきましょう。
●元禄文化(17世紀末~18世紀):上方(京都や大坂)中心の町人文化。5代将軍・徳川綱吉の時代
・松尾芭蕉(ばしょう):俳諧(俳句)を芸術の域に高めた。『奥の細道』
・井原西鶴(さいかく):大坂。浮世草子(風俗小説)を創始。『好色一代男』『日本永代蔵』
・近松門左衛門(ちかまつもんざえもん):京都。人形浄瑠璃、歌舞伎の作者。『国姓爺合戦』『曽根崎心中』
・尾形光琳:琳派(りんぱ)・画家:『紅白梅図屏風』
・菱川師宣:浮世絵の創始者。『見返り美人図』
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●化政文化(19世紀始め):江戸を中心に発達した町人文化。落ち着いて洗練。
・浮世絵:錦絵(多色刷り)・美人画(歌麿)・役者絵(写楽)・風景版画(北斎、広重)
・俳句:与謝蕪村、小林一茶
・国学(復古神道):賀茂真淵(かものまぶち)、本居宣長(もとおりのりなが)、平田篤胤(ひらたあつたね)
・洋学/蘭学:『解体新書』(前野良沢、杉田玄白)
・伊能忠敬(1745~1818):日本地図(『大日本沿海輿地全図』)
元禄文化(17世紀末~18世紀)
「元禄文化」は「元禄時代」(1700年頃・綱吉の時代)に栄えた文化です。
明るく華やかで活気に満ちた文化です。
(「元禄文化=1700年前後+5代将軍・綱吉の時代」と覚えましょう)。
元禄時代とは、生類憐みの令で有名な、5代将軍・
徳川綱吉(在位1680~1709)の後半期を指します。
経済が発展し、その中心地である大坂(「天下の台所」)や京都など
「上方(かみがた)」11の町人文化が発展しました。
(京都・大坂を江戸と比較して、都(京都)へ行くのを「上る」と言った
事から「上方」と言うようになりました。今は逆ですね「上京」=東京にいくですから)
元禄文化のスーパースター:松尾芭蕉・井原西鶴・近松門左衛門
元禄文化で絶対に知らなければいけないのは以下の3人です。
松尾芭蕉(ばしょう):俳諧(俳句)を芸術の域に高めた。『奥の細道』
井原西鶴(いはらさいかく):大坂。浮世草子(風俗小説)を創始。『好色一代男』『日本永代蔵』
近松門左衛門(ちかまつもんざえもん):京都。人形浄瑠璃、歌舞伎の作者。『国姓爺合戦』『曽根崎心中』
松尾芭蕉(1644~94・まつおばしょう)
・伊賀(今の三重県。忍者で有名)生まれの俳人(俳句を作る人)
・俳諧(俳句)11を和歌と対等の地位に引き上げた
・蕉風(しょうふう)11(松尾芭蕉一派)の俳句を確立。古池や 蛙(かわず)飛び込む 水の音
・『奥の細道』11『笈の小文(おいのこぶみ)』『野ざらし紀行』『猿蓑』
*中学受験的には「奥の細道」のルートと代表的な俳句、そして奥の細道以外
の作品を知っておくと良いでしょう。
『奥の細道』は芭蕉が弟子の曽良(そら)と江戸~東北・北陸~美濃・大垣
(今の岐阜県)を旅した際の紀行文です。
「月日は百代の過客(はくたいのかかく)にして、行きかふ年もまた旅人なり。」
(月日は永遠の旅人であり、来ては過ぎゆく年もまた旅人のようなものである。)
という書き出しで有名です。
「月日は百代の過客にして、行きかふ年もまた旅人なり。
舟の上に生涯を浮かべ、馬の口とらへて老を迎ふる者は、
日々旅にして、旅をすみかとす。古人も多く旅に死せるあり。」
いいですね~、名文ですね~~。
【奥の細道のルート】
奥の細道の旅で松尾芭蕉が詠んだ俳句。
●夏草や兵どもが夢の跡 (平泉)源義経を想起していると思われます
●五月雨の降残してや光堂 (平泉)
●閑さや岩にしみ入蝉の声
●五月雨を集めて早し最上川 (現在の山形県)日本三大急流ですしね
●荒海や佐渡に横たふ天河 (新潟)
●名月や北国日和定なき
井原西鶴(いはらさいかく)1642~93
・大坂の人
・浮世草子10(世俗的・通俗的な小説。仮名草子と対になる言葉)の作者
・代表作:好色物9『好色一代男』『好色五人女』
町人物8『日本永代蔵』『世間胸算用』
武家物8『武道伝来記』
井原西鶴は、浮世草子がやはり大事です。いわゆる、庶民の話と
理解して良いでしょう。風俗小説ですね。林真理子みたいな感じ
でしょうか?難しい高尚な文学ではないという事ですね。
近松門左衛門(ちかまつもんざえもん)1653~1724
・京都の人。歌舞伎と人形浄瑠璃の作者。
・人形浄瑠璃11(にんぎょうじょうるり)は現在の文楽(ぶんらく)
・代表作:時代物9『国姓爺合戦(こくせんやかっせん)』9。明(中国)の話
世話物10『曽根崎心中』。義理人情もの。竹本座。『心中天網島』8『冥途の飛脚』6
・竹本義太夫(ぎだゆう)8:竹本座の創始者で近松門左衛門の作品を上演
歌舞伎11では、女歌舞伎8→若衆歌舞伎9→野郎歌舞伎9と発展し、元禄歌舞伎
全盛期を迎えます。歌舞伎役者として、江戸では市川団十郎(初代)11、上方
では坂田藤十郎(初代)11が活躍しました。
尾形光琳:琳派(りんぱ)・画家
尾形光琳(1658〜1716)は元禄期の画家です。光琳派(琳派)という画風を確立。
代表作に『紅白梅図屏風』(こうはくばいずびょうぶ)9
MOA美術館(静岡県熱海市)
『燕子花図屏風』(かきつばたずびょうぶ)10
根津美術館(東京都南青山)
菱川師宣(ひしかわもろのぶ)1618~94:浮世絵を確立
「浮世絵」は江戸後期の化政文化が有名ですが、菱川師宣11だけは
元禄文化の人です。この人によって浮世絵は創始されました。
代表作は『見返り美人図』11
見返り美人図11
元禄時代=5代将軍・綱吉の時代ですが、宗教としては、江戸時代初期から、
上下関係や徳を重視する儒学(儒教)11の朱子学11が重んじられました。
綱吉は(儒教の租である孔子の)孔子廟を湯島に作ります(湯島聖堂10)
(今でもありますし、中にも入れます)
湯島聖堂(東京都文京区湯島)とその中にある孔子像(世界一大きい?)
化政文化(19世紀はじめ):江戸の町人文化。浮世絵。
「化政文化」11は文化・文政時代(1804~29)に江戸を中心に
発達した町人文化です。落ち着いて洗練されています。洒落(しゃれ)
ていて通(つう)を好み、野暮(やぼ)を笑うという特徴があります。
浮世絵が有名です。
化政文化期の浮世絵:喜多川歌麿・東洲斎写楽・葛飾北斎・歌川広重
元禄期に菱川師宣が創始した浮世絵は、化政文化の時代に全盛期を迎え
世界的に影響を与えます(ゴッホとか)。
錦絵(多色刷り)11・美人画10・役者絵10・風景版画10
個々の浮世絵師の作風と作品をセットにして覚えましょう。
喜多川歌麿:美人画
東洲斎写楽:役者絵
葛飾北斎:風景版画(富嶽三十六景)
歌川広重:風景版画(東海道五十三次)
喜多川歌麿10:美人画の最高峰。「婦女人相十品」7
欧米圏でも「utamaro」は有名。
東洲斎写楽(とうしゅうさいしゃらく)10:役者絵(五世・市川団十郎など)
葛飾北斎:風景版画『富嶽三十六景』『北斎漫画』
風景版画『富嶽三十六景』の「神奈川沖浪裏(おきなみうら)」7
風景版画『富嶽三十六景』の「凱風快晴」(赤富士) 甲州石班沢(こうしゅうかじかざわ)
尾州不二見原 甲州三島越の景
葛飾北斎『富嶽三十六景』いいね!
葛飾北斎(1760~1849)は90歳近くまで活躍し、生涯に、3万点を超える
作品を発表し、「画狂老人(がきょうろうじん)」を自称し、30回以上名前
(号)を変え、2度結婚し、93回引っ越したとも言われています。
また、「宵越しの銭は持たない」的に金銭感覚が皆無で、服装も無頓着で、
人に会っても挨拶もしないといった伝説もあるようです。
葛飾北斎、生き方がアートやね。
歌川広重:風景版画(『東海道五十三次』『名所江戸百景』)*安藤広重 ともいう
歌川広重:『東海道五十三次』「日本橋」
『東海道五十三次』「庄野」
『東海道五十三次』「蒲原」 『名所江戸百景』
歌川広重もいいね!
化政文化の俳句・俳人:与謝蕪村、小林一茶
与謝蕪村(よさぶそん)11:関西の人。『蕪村七部集』7
作品(代表作)
菜の花や 月は東に 日は西に
春の海 ひねもすのたり のたりかな
さみだれや 仏の花を 捨てに出る (夏)
小林一茶(こばやしいっさ)1763~1827
作品(代表作)
『おらが春』8
すずめの子 そこのけそこのけ お馬が通る
めでたさや 中位なり おらが春
やせ蛙(がえる) 負けるな一茶 これにあり
うまさうな 雪がふうはり ふわりかな
蘭学:オランダから西洋の学問が入ってきた
洋学10:初期「南蛮学」中期「蘭学」後期「洋学」(英独仏)
蘭学11:オランダ語を通じて学ばれた学問。『解体新書』など
『解体新書』11:1774年。最初の翻訳解剖書。前野良沢11、杉田玄白11
らが『ターヘル・アナトミア』7をオランダ語から訳した。
杉田玄白の『蘭学事始』10は『解体新書』を訳した際の苦労話。
国学:復古神道・『古事記伝』(本居宣長)
元禄期には、儒教の朱子学が重んじられましたが、化政文化の時代になると、
外国についてのことがどんどん入ってきた事もあり、
「儒教(朱子学)は中国からの輸入品やろがい!日本独自の思想はないんかい!
『古事記』があるやないかい!神道(しんとう)があるやないかい!」(乱暴な
物言いですが・・・)という事から『国学』が流行りました。
賀茂真淵(かものまぶち)10:『万葉集』や『古事記』の研究
本居宣長(もとおりのりなが)11:『古事記伝』10 。復古神道9を主張。伊勢松坂の医者。
平田篤胤(ひらたあつたね)11:復古神道を大成。
塙保己一(はなわほきいち)11:『群書類従』11。和学講談所9を設立。
復古神道の流れは、幕末の尊皇攘夷(天皇を敬い外国人を討つ)思想の志士
達に強烈に受け入れられ、明治時代の国家神道につながっていきます。
伊能忠敬(1745~1818):『大日本沿海輿地全図』10
伊能忠敬(いのうただたか)は、1800~16年、幕府の命令で日本全国
の沿岸を測量。「大日本沿海輿地全図」(だいにほんえんかいよちぜんず)
を作成。驚異的な正確さが今でも知られています。
平賀源内11(1728~79):学者(色々な事をやりました)
寒暖計8、エレキテル(静電気を発生させる)9、戯作、「西洋婦人図」etc.色々やってます。
緒方洪庵11(1810~63):大坂で開業した医者。蘭医。適塾。
蘭医(オランダ医学、西洋医学)を学んだ医者。
大坂に適塾(適々斎塾)11を作り、多くの人に最新の医学、蘭学を
教えました。福沢諭吉、大村益次郎、橋本佐内等が門下生です。
下記の司馬遼太郎の本や手塚治虫の『陽だまりの樹』に緒方洪庵の
話がたくさん出てきます。
シーボルト:ドイツ人。医者。
シーボルト11はドイツ人の医者で、来日後、長崎で医学を教えていました。
それが鳴滝塾(なるたきじゅく)11です。伊藤玄朴、高野長英などが輩出。
ただ、1828年の帰国時に持ち出し禁止の日本地図を高橋景保8から入手した
事が発覚し、国外追放になります(シーボルト事件8)
*すでに伊能忠敬の「大日本沿海輿地全図」はできています
帰国後シーボルトは『日本』6という本を書きます。
まとめ
●元禄文化(1700年前後):上方(京都や大坂)中心の町人文化。明るく、活気に満ちた文化。綱吉の頃
●化政文化(19世紀はじめ):江戸の町人文化。浮世絵。落ち着いて洗練された文化
【寛永文化4(江戸初期)→元禄文化11(江戸前期)→化政文化11(江戸後期)】
●元禄文化(17世紀末~18世紀):上方(京都や大坂)中心の町人文化。5代将軍・徳川綱吉の時代
・松尾芭蕉(ばしょう):俳諧(俳句)を芸術の域に高めた。『奥の細道』
・井原西鶴(さいかく):大坂。浮世草子(風俗小説)を創始。『好色一代男』『日本永代蔵』
・近松門左衛門(ちかまつもんざえもん):京都。人形浄瑠璃、歌舞伎の作者。『国姓爺合戦』『曽根崎心中』
・尾形光琳:琳派(りんぱ)・画家:『紅白梅図屏風』
・菱川師宣:浮世絵の創始者。『見返り美人図』
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●化政文化(19世紀始め):江戸を中心に発達した町人文化。落ち着いて洗練。
・浮世絵:錦絵(多色刷り)・美人画(歌麿)・役者絵(写楽)・風景版画(北斎、広重)
・俳句:与謝蕪村、小林一茶
・国学(復古神道):賀茂真淵(かものまぶち)、本居宣長(もとおりのりなが)、平田篤胤(ひらたあつたね)
・洋学/蘭学:『解体新書』(前野良沢、杉田玄白)
・伊能忠敬(1745~1818):日本地図(『大日本沿海輿地全図』)
江戸時代(1603~1867)の文化(元禄文化→化政文化) この記事!
文化史(日本史)の概略・まとめ②(桃山文化・江戸の文化・明治の文化・大正と昭和前期の文化・戦後の文化・現代の文化)